2017年4月12日水曜日

Mastersで見た”タメ”の法則

早すぎる死だった・・・。54歳で天に召されたスペインの英雄ほど
この人の真似は出来ないと感じさせたプロフェッショナルゴルファー
はいないだろう。しなやかで、アグレッシブで美しいスイングの持ち主。


『私は次に打つショットの球筋やライン、それからその球が落下して転がって
いく様子まで、すべてがはっきりと見えてしまうことがありました。』
~セベ・バレステロス~     ゴルフダイジェスト引用

母国の英雄、私のアイドルと公言する男がセベ氏の死に直面し
先輩のオラサバル氏と泣き崩れる姿が記憶に蘇る。
セベ氏と同じく十代で世間の注目を浴び”エルニーニョ”と呼ばれた。

セベ氏は、19歳でヨーロピアンツアー賞金王に輝き、マスターズに勝利
したのが、1980年で23歳の時。
1997年でタイガーウッズが勝利し更新するまでの、最年少記録だった。
スペインゴルフの先駆者であり、英雄。
そのゴルフスタイルは、ゴルフ発展国アメリカのゴルファーを唖然とさせた。
ゴルフジャーナリストの三田村昌鳳氏は、帝王ジャック・ニクラス氏が
1980年のMasters中継でセベ氏のPlayを見て

”なんてこった、こんなばかげたゴルフは見たことない。”
と苦笑した事をNumberWebに書いている。

そんな帝王でも、アーニーズ・アーミーからは”オハイオのデブ”
と呼ばれ、Playにも支障があったことをカミングアウトしている。

セベ氏はアメリカに乗り込んだときに、破天荒なPlayぶりから
キラー・インスティンクト”と言われた。
そのことをインタビューで問われると、マタドールを生んだラテン
の血と父親譲りと答えている。〜ゴルフダイジェストから引用〜

果たして、ラテン民族の血とはどのようなものなのか?!
大航海時代を牽引した、ポルトガルとスペイン。

イスラーム帝国の勢力拡大によって陸路による貿易を絶たれた
ラテン民族は、その活路を海に向けた。
航海王子と言われたエンリケ皇太子から端を発し、マルコポーロがアイドル
だったコロンブスが、ポルトガルから航海の支援を断られ、スペインの
イザベル女王に泣きつき、2度めの交渉で支援を得ることで、新大陸
に向けて航海を果たした。

新大陸制覇に血眼となったハプスブルク家率いるスペイン=ハプスブルク朝
は太陽の没することのない大帝国となった。
アメリカの起源は自分達にあるとの誇りが、ラテン民族の血となり
脈々と受け継がれ、アメリカに対して無意識に対抗心を燃やすのだろう。

スコットランドのコリン・モンゴメリー氏、イングランドの
リー・ウエストウッド選手同様にメジャーに縁のない選手として
多くのゴルフファンやゴルフメディアから見られたS.ガルシア選手。

そんな不満からなのか、メジャーで崩れれば暴言と捉えられる
発言を繰り返した。
憧れの存在から、いつしか対抗心に変化してか、人種差別と捉えられる
発言でT.Wをも批判した。

今年のMasters最終日に死闘を演じた、対戦相手のJ.ローズ選手は
ジュニア時代からの良きライバル、良き友であるガルシア選手が
アメリカでは受け入れられてるとは言えない反応が多かった。
長きに渡るガルシア選手に対するそういった反応が、最終日に
変わったことが、やっと周りも気付き始めた証拠と言った。

ガルシア選手は、Masters優勝後にGolfchannelのインタビューで
大会前から自信が持てた考えはどのようにして生まれたのかと
問われ、「それは、簡単ですよ。自分の必要な人を見極めるだけ」
と言い「聞いたことを言うのではなく、本当に必要と思っていること
を言ってくれる人が回りにいる、新しい感情が芽生えていると感じる
こんなに早く自分が変われるとは思わなかった」と言っている。


2012年メダイナで開催されたライダーカップ。
欧州チーム僅差での劇的な逆転勝利となったが、欧州チームの
原動力となったのは、前年に亡くなったセベ氏への想いである
ことは、ガルシア、ローズ選手の言動に表れていた。
コースに向かう通路にセベ氏の写真が飾ってあり、通路を
通るときに選手達は、それぞれに想いを表現しながら
戦いへと向かっていった。

そんな良きライバル、盟友のゴルフゲームマネージメントと
ゴルフスイング動作は大きく異ると言っていいだろう。
何が違うのか検証してみよう。









ガルシア選手の特徴は、デビュー当時から変わらない、所謂”タメ”と言われる
動作に他ならないだろう。

多くのゴルファーやスイングコーチなど飛距離には欠かすことが出来ない
ファクターであると認識する動作。
ツアープロを含め、飛距離があるゴルファーのスイング動画を見れば
その点が、飛距離不足に悩むゴルファーとの違いだということは
誰が見ても気付くであろう。

本質は、その”タメ”なるものはゴルファーが意識することによって
その見た目の形が実現するのか?!
そして、その結果として飛距離に差が出るのか?!
ということになる。

ガルシア選手ほどではないにしても、ローズ選手にも必要以上に
”タメ”は出来ている。

クラブを振るスピードは、腕を振るスピードによって決まる。

これは、ゴルフに限った話ではなく、様々なスポーツに当てはまる。
現ソフトバンク、ヤクルトスワローズ時代には豪速球投手として
認知されていた五十嵐亮太選手の150Km/hを超える速球の秘密は
右腕の肘の折れ曲がる内角が他の選手より少なく、キープ出来る
こととして紹介されていた。

なる程と思うが、ゴルフも同じで右利きのゴルファーであれば
インパクト前に右肘の内角が少ない状態を出来るだけキープして
インパクトを迎えれば見た目は”タメ”が出来る。
だが、ガルシア、ローズ選手の動画を比較すると肘の角度は
両選手とも切り返しからインパクトの間まで、それ程変わらない。

腕とクラブの動作関係は、ボールを投げるなどの動作と同じで
リリースする側とは反対となる腕の肩関節を先に動かすことの
反動によって動き出す。
次にリリースする腕(右利きならば右腕)の肘が動き
最後に両腕の手が動くことになる。
もちろん、そのきっかけとなる動きが必要で、それが体幹の
どの部分が良いのか?!ということになる。

そして、切り返しからインパクトを迎える途中に”タメ”が出来る
場所が早いゴルファーは、この順番が逆となりインパクトで
辻褄を合わせる動きとして左肩の関節を使うしかなくなる。
本来は、目標に近い足(右利きなら左足)に力が伝わるはずが
左肩に力が入ってしまうためにバランスが取れない結果となる。

腕の関節でスイング動作中にカギを握るのは、手であり
手を使う場所と使い方と手の力点を理解すれば”タメ”は作れる。

では、ガルシア選手のあのシャフトをしならせた”タメ”はなんだろうか?!

恐らく、持って生まれた天性だろう。
天性と言っても才能ではなく、身体的特徴と言える。
30年以上に渡って、ゴルフで人より多くの時間を費やし続け
たにも関わらず、主だった故障がないのが証明していると思う。
身体が柔らかいのか、強いのかは定かではないが、”タメ”に
焦点を当てれば、手だろう。
手の中でも親指が強く、しなやかで柔らかい筈である。

グリップ動作の中で、この親指の動かし方が非常に難しく
それでもって厄介である。

コーチという職業柄、ゴルファーの手は多く見てきたし
興味深く観察してきたつもりで、飛距離の出るゴルファーには
ある共通した特徴がある。

それは、親指の付け根が柔らかく、大きく手の甲側に
反らすことが出来る点である。
柔らかい人は、親指の先を手首まで反らすことが出来る。
これは、トレーニングで何とかなる問題ではなく
天性と言えるのではないかと思う。
普段あまり気にしないが、人は加齢で手の関節が固くなる。
体幹の関節を柔らかくする必要もあるが、手の関節
を柔らかくすればある程度の効果はある筈である。

私事であるが、今から20年程前にレジェンドの一人である
ゲーリー・プレーヤー氏と握手する機会に恵まれた。
ビック3の中では、小柄であるが飛距離は決して引けを
取ることがなく、常にトレーニングを欠かさないと聞いた。

握手した時に感じたのが、体格の割に手が大きく分厚く
指が太いことだった。
握りしめられた時のプレッシャーから、きっと手が強く
手首も強いと感じた。
プレーヤー氏が片手の指で、ゴルフクラブを数本重ねて
グリップ部分を指で挟んだ状態で水平に持ち上げる
パフォーマンスは有名である。
セベ氏も握力が強かったとの記録が残っている。

飛距離の要因に欠かせない事としては、瞬発力もある。

競泳日本代表トレーナーで北島康介選手の専属トレーナーとして
北島選手を支えてきた小沢邦彦氏は、北島選手が持つ速さの秘密
である瞬発力は、北島選手の骨と筋肉を繋ぐ腱の硬さにあると言う。
腱が強いがために関節が曲がりにくく、普通の水泳選手より
関節の可動範囲が狭いが、それが強い瞬発力を発揮すると言う。
〜Sportsnavi記事より引用〜

スポーツ選手としての欠点と言える部分を天性として発展させた
好例ではないだろうか。

体格を含めた見た目だけでは、判断しきれないのが飛距離の秘密である。

ガルシア選手とローズ選手のスイング動作の違う点は、見た目では
上体の使い方にある。

ガルシア選手の持ち玉は、低いスライス系。
ローズ選手は、飛距離をコントロールしているのでほぼストレート。

この違いは動作のどこに出るかは、首の使い方にある。
ガルシア選手の正面からの動画を見ると首が少し傾いている。

ガルシア選手は、ルーティンでバックスイングの動きを必ず確認する。
この動作により、目標とは反対側を見る癖が付いているので
バックスイングで首が傾き、ローズ選手に比べると左足の真上で上体が動いている。

ローズ選手のコーチは、ショーン・フォーリー氏で、フォーリー理論は
目標方向側の脚の上で上体を動かす方法。
ローズ選手も他の選手に比べると、その傾向は強い。
動作を安定させて、飛球コントロールが容易となりやすい動作ではあるが
飛距離はある程度犠牲となるであろう。
この動作では、飛球はスライス系となりやすいので、飛距離不足に悩む
ゴルファーにはお薦めはできない。

2017年Mastersの15番でのイーグルによって蘇ったガルシア。
1999年Mastersで2着目のグリーンジャケットをガルシアが見守る中
手にしたオラサバルも最終日に15番でイーグルを奪い、猛追する
G.ノーマンを振り切った。




スペインのゴルフスタイルはこの英雄から始まり、脈々と受け継がれるのだろう。

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